■文章編15      ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓      ┃ ┃      ┃ FMに始まる・・・・ ┃      ┃ ┃      ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ 月刊パソコン情報誌「Oh!FM」は, '91年9月号を最後に,「Oh!FMTO WNS」と誌名を変更,装いも新たに再出発しました。それから,3年。 自分自身が多少なりとも記事作成に参加してきた雑誌の名前が変わってしま うというのは,奇妙なものです。なんというか,別に誰が結婚したり離婚した りしたわけでもないのに,今日からこの家族全員の姓が変わってしまうんだよ, といわれたような,そんな感じ。いっそ家族の顔ぶれや住まいが全部変わって しまうならそれなりに理解できるだろうに,同じ場所,同じメンバーで,ある 日突然違う名前を共有するような,そんな違和感。 というわけで,誌名が変更されたのは,読者のみなさんだけでなく僕たち協 力スタッフにも多少は位相のズレのようなものがあったのですよ,という話を したうえで,ここでは,「Oh!FM」という誌名の「FM」,そして新雑誌名 が「Oh!TOWNS」ではなく「Oh!FMTOWNS」になったところの「FM」 とはいったい何か,に焦点を当ててみたいと思います。 ■FMとは何か 「FM」という言葉で,最もメジャーな用法は,いうまでもなく,ラジオの 「FM放送」でしょう。この場合のFMとは,「周波数変調(Frequency Mo dulation)」という言葉の略です。それでは,その「周波数変調」とはいった い何かといえば, 搬送波の周波数を信号波の振幅に応じて変化させることによって,搬送波 に信号を乗せる変調方式 であり(があん・・・・),それではその「変調方式」とはそもそも何かといえば, 通信系において,通信すべき原信号をそれを伝送する伝送路の特性に最も 適した信号形態に変換する操作 のことであり(くらくら・・・・),一方「搬出波」とは, 変調される信号 のことです(・・・・ばったり)。 ・・・・はっきりいって,さっぱりわけがわかりませんね。興味のある方は,ど うか,理工系の大学に進み,電気系の学科に進んでください。ちなみに,僕の 選んだ学科はそうではありません(きっぱり)。これ以上,深く追求しないよ うに。 まあ,ご覧のとおり,「FM放送」についての具体的な定義や技術的な理屈 を追うのは手に負えませんので,外回りだけさらりと触れておきましょう。 FM放送というのは,みなさんもご存じのとおり,VHF帯(日本では76〜 90MHz)を使う音声放送であり,中波放送(AM放送。振幅変調が用いられ ている。周波数535〜1605KHz)や短波放送(周波数3〜30MHz ,振幅変調。 電離層で反射されるため,極めて遠距離まで到達しやすいという特徴がある) などに比べて, ・雑音に強い ・音質がよい ・1つの電波でステレオ放送ができる ・放送局から少し離れると受信しづらい 等々といった特徴をもっています。 さて次に,パソコンの世界ならでは,の「FM」について簡単に触れてみま しょう。こちらは音源チップ,いわゆる「FM音源」というものです。 「FM音源」は,1973年に,アメリカ,スタンフォード大学のチョーニング博 士によって開発されました。これを,DX7という,当時としてはかなり廉価 なシンセサイザに搭載してそれを大ヒットさせ,FM音源そのものを一気にメ ジャーに広めたのが,楽器メーカーのヤマハです。 このFM音源のFMも,FM放送と同じく「周波数変調(Frequency Modu lation)」の略です。理論的には,音源チップ内に,メモリを読み出す基本と なるノコギリ波と,メモリされているサイン波があり,それを加算することに よって新しい波形を作り出すわけです(ノコギリ波をサイン波で変調している ため,周波数変調という)。デジタルな波形ができると,どうしてシンセサイ ザのあの音が出てくるかといえば・・・・このあたりも・・・・パスですね。すみませ ん。 FM音源については,これまでにもいろいろ優れた文献が発表されています から,詳しく知りたい方は,ぜひそちらをご覧ください。・・・・ほかの本や記事 に責任おっかぶせて逃げるわけではない(そうかもしれない・・・・)のですが, さすがに,「FM放送」「FM音源」についてこれ以上詳しく解説するとなる と,このようなお気楽コーナーには荷が重そうです。 さて,それではいよいよ本命(?),「富士通のパソコンFMシリーズ」の 「FM」を取り上げてみましょう。なんてことないんですけど,最近ご存じな い読者の方もちらほらおられるようですので・・・・。 これ,単に, Fujitsu Micro の略です。Microというのは,いわゆるマイコン,Micro Computerのマイク ロですね(昔は,パソコンではなく,マイコンという言葉が広く使われていま した。しかもよくMy Computerの略と勘違いされて)。 FMシリーズの始祖にあたる8ビットパソコンFM-8(1981年発売)は正 式には「FUJITSU MICRO8」という商品名だったのです。FM- 7でも同様に,本体には「FUJITSU MICRO7」と書かれていまし た。そして,その略である「FM」は,グラフィックに強く,究極の8ビット MPU=モトローラ6809をしかも2個積んでサブにグラフィックを任せ,さら に8ビット用OSながらマルチユーザ,マルチタスクを実現したOS-9が走 る,などなどといった,栄光の肩書だったのでした。 この肩書は,現在にも脈々と受け継がれ,FM TOWNS,FMR,FM Vという名称がその跡を継いでいます。僕たちは,このFMという名のもとに, 明日は何を見るのでしょう。